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2012年度 グランセリーナ大規模修繕工事

2013年度 付加価値を高めマンションを長持ちさせる設備改修

2013年度 マンション再生協議会シンポジウム

2016年度 マンション管理オンライン「インタビュー」

マンションタイムズ 2023年7月5日 第457号

マンションタイムズ2023年7月5日付け

建設工業新聞 2023年6月6日付け

建設工業新聞 2023年6月6日付け

マンションの大規模修繕30年の軌跡

マンションの大規模修繕30年の軌跡

はじめに

今から30年前の1987年…日本の経済はバブル景気の真っ只中にありました。土地の価格が高騰するので建築の価値が相対的に低下していきます。まだまだ使える建築が次から次へと取り壊されて、どんどん新しい建築が建てられてゆきました。豪華な仕上材をふんだんに使い、奇をてらった何の文脈もないポストモダンの建築がもてはやされていました。そんな時代に、古びたマンションをこつこつと修繕している建築家たちがいたのです。メンテナンス部会の創立者たちです。建築家のサロンのようなJIA(日本建築家協会)のなかにあって彼らは異端児でした。修繕などは建築家のやる仕事ではないと言い切る幹部らからは白い目で見られていました。それでも修繕の分野を切り開いて、創造的な建築家の仕事として確立してゆきます。
あれから30年がたちました。世の中が変わりました。日本の経済は失われた30年といわれています。建築の世界もスクラップアンドビルドからフローの時代に大きく転換しました。建築家の仕事も箱物をつくるよりも人の場をつくる仕事に変わってきています。メンテナンス部会のメンバーの活躍はJIAにとどまりません。阪神淡路大震災を受けて、JASO(耐震総合安全機構)が誕生し、建築、構造、設備の総合的な耐震化という概念が定着しました。東日本大震災を受けて、URD(建築再生総合設計協同組合)が組織され、大規模修繕と耐震補強と設備改修が同時に実践されるようにもなりました。
この間の30年にメンテナンス部会は何を考え、想い、行動してきたのでしょうか。これからはどこに向かって歩んでいくのでしょうか。メンテナンス部会の30周年記念誌を編纂していたら、マンションの大規模修繕の30年の軌跡と技術の変遷と実績の蓄積が具現化しました。われわれにとってはたいへん貴重な資料です。ぜひとも、マンションの区分所有者、管理組合の方々、マンションの修繕や改修やリノベーションに関わる建築家、施工会社、メーカー、行政、自治体など関係している方々に広く手にとっていただいて、これからの健全で快適なマンション大規模修繕に少しでもお役に立てられたら嬉しい限りです。

2017年1月 宮城秋治